我知らず発する言葉

ずーっと前に書いたことがあるのだけど

プロレスを見に行った会場で

ハイヒールのリンゴを見かけたとき

「あ リンゴちゃんや」

と我知らず呟いていて

ハッとなったことがある

ハイヒールのリンゴを「リンゴちゃん」と呼んだことは

それまでたったの1回もないのに

本人を目の前にして出た言葉は

思いの外 親し気な呼び名であった

もちろんその後彼女をちゃん付けで呼んだことは一度もない

 

数年前 駅前を歩いていたら

前から深夜番組でたまに見かける芸人が歩いていた

わたし「あ ファビアンや!」

ファビアン「あ どーもー」

わたし「頑張ってくださーい」

これも我知らず

割と大きくはっきりした声で言葉を発していた

偶然知り合いに出会ったレベルの気楽さで

声をかけている自分にびっくりしたのだった

 

で 先日

学生時代によく通った映画館が閉館することになり

それに伴うイベントに行ってきた

わたくしの好きな向井秀徳のライブがあったのである

向井のライブにお酒は付きもので

まずは映画を見ながらレモン酎ハイをいただく

上映後 トイレに駆け込むも長蛇の列

でも これを逃すと後悔するだろうと

忍耐強く待ち トイレを済ませて出たら

ライブ上演の3分前

間に合った~!と入口へ向かい角を曲がると

向井秀徳がこちらに向かって歩いてきた

その時 わたしの口からでたのは

「あ 向井さん(とても小声)」であった

 

普段 わたしの世代の人がそうであるように

彼のことを向井と呼んでいるのだけど

発せられた言葉は さん付けであった

全くもって意外性のない結果であった

 

ちなみにこういったミュージシャンと話がしたいかと言われると

そうでもない

向井さん!の後に続く言葉がない

言いたいことがない

ライブよかったです とか月並みなこと言って

面白くない自分を責めたくない

 

年末に行った(別のバンドの)ライブで

とあるミュージシャンが

声掛けられても「あ どうも」って答えて

その後どうしたらいいかわからないから困る

あれはどうしたいわけ?

と言っていた

ごもっともです

ということで

わたしは会話よりも

近寄ってニオイを嗅いだり

白髪を見つけたりしたい

(根っからの気持ち悪いタイプ)